エアコンいらず!? 意外な知恵も…アツさ対策 (夕刊フジ)
今月1日、東京都豊島区巣鴨のマンションに住んでいた老姉妹が熱中症とみられる症状で死亡しているのが見つかった。2人は生前に「クーラーが嫌い」と話し、45年間ずっとエアコンなしの生活を送っていたという。113年の観測史上最も暑く、命をも落としかねない今夏だが、エアコンがない生活環境の人に話を聞くと、暑さに対する意外な知恵を得ることができた。
84歳と77歳の姉妹が遺体で見つかった部屋は、約45年前に建てられた分譲マンションだった。2人は角部屋に住み、南側にベランダ、西側に窓があった。階上に住む女性(83)は「昔はどの部屋もエアコンなんて付けていなかった。夜になれば角部屋で風通しが良く、涼しいぐらい。それが2、3年前からはエアコンを24時間つけていないと生活できないほどになった」と語る。
姉妹は別の住民に「クーラーは嫌い」と話していたが、姉は元公務員で経済的に困窮していたわけではなかった。45年続けたエアコンなしの生活習慣が悲劇を招いた可能性が高い。
いまやエアコンは生きるうえでの必需品。今夏は特に“生命線”とも言えるものだが、「エアコンなしの生活が、むしろ面白くなってきた」と語る人もいる。埼玉県川口市に住むホテル従業員の男性(33)は以前、エアコンが備え付けの部屋に住んでいた影響で、自費でエアコンを買うのを「バカらしい」と思い、その後引っ越した部屋では未設置のまま。扇風機もない。そのため、「7月ごろは暑すぎて1時間ぐらいしか睡眠できない日が続いた」。そこで男性は知恵を絞った。
「水風呂に入ると10-20分は涼しくなる。暑くなったらまた水風呂に入ることを繰り返し、室内では上半身裸。じっとしていても汗が出て寝づらくなるので、就寝前には水を飲みすぎない。時々、風通しのいい陸橋や土手の上など、少しでも高い場所へ散歩に行って気を紛らわせる。この方法で8月は何とか生き残った。9月に入り『生きていける』と確信し、挑戦に勝った気分になれた。四季を通じて電気代は1カ月1200円程度です」。暑さを達観するのも一つの手のようだ。
杉並区に住む舞踏家、南阿豆さん(32)のワンルームマンションにもエアコンはない。「冷え性で体質的に合わない」という理由からだ。その南さんも「風呂に水を張ると全然違う」と水風呂の活用を提唱する。「洗濯物を室内で干すと涼しい。水も、よく飲むべきです」。ただ、今年は例年より蚊が多く、「網戸にして蚊取り線香をたいても1晩に10カ所ぐらい刺された」そうだ。
熱波が毎年やってくるインドではどうなのか。『インドで「暮らす、働く、結婚する」』(ダイヤモンド社)の著者で、バラナシ在住の杉本昭男さん(39)は「この夏は、日本からの観光客が『こっちのほうが涼しい』と言っています」と驚いている。バラナシでは5、6月の気温が45度にも達するが、「エアコンは普及していない。あっても停電が多くて使えない」という。
そんなバラナシでは「熱風の時期は昼間、外を出歩く人は少ない。水風呂と水をよく飲むようにしている」といい、暑さ対策の基本はどこも同じのようだ。[ 2010年9月6日17時00分 ]